日本は相互扶助の精神に基づく国民皆保険体制が確立されているため、低料金で一定水準の医療を国内どこにいても受けることができる。
しかし、近年は非正規労働者の保険料未納が増大、また高齢化により医療費負担が増えていることから、医療保険事業は慢性的に赤字が続いており、抜本的な改革が急務となっている。
世界に誇る国民皆保険体制でも医療格差は生じており、地域によっては医療が受けられないこともある。
都心部では徒歩圏内に救急病院が数件あり、駅前のビルには複数のクリニックが入り総合病院並みの診療科目に対応できるなど医療が充実している。しかし、アクセス環境に優れていない過疎地域では医療機関が全く存在していない所も珍しくなく、医療を受けるために都市部へ出かけなくてはならない。
過疎地域でも若者であれば車で往復できるが、高齢者の場合は自治体が運営するコミュニティバスが移動手段になっていることが多い。数時間かけて病院へ行っても診療時間は数分で終了、また数時間かけて帰宅しなくてはならないため、過疎地域では健康でなくては医療が受けられない本末転倒なことになっている。
かつては医局(教授を頂点とした人事組織)に力があり、過疎地域へも医師等を派遣していたが、近年は医局の影響力が低下しており、地方では医師等を確保することが困難になっている。そのため、地方都市でも専門医を確保できなくなり、診療科目を閉鎖する総合病院が増えている。
特に深刻なのは産婦人科医不足である。産んで育てることができなければ地方の過疎化は進むなど、医療格差は医療だけの問題では済まなくなっている。